金木犀は、ただ香るだけ
人々はその香りを嗅いで
肌寒い秋を受け入れ、あの眩しい夏を諦めているのだろう。
北海道に金木犀は無いので
どういう香りなのかもわからないし
そもそも木なのか花なのかすら知らなかった。
植物の香りを嗅いで季節の移り変わりを感じる様子は
現代人が忘れられない"ヒト"としての本能のようで
面白くも愛おしく思える。
数ヶ月前に「夏が嫌いだ」という投稿をしたのだが
今年の夏は、夏のようで夏でなかった。
嫌いな君のことばかり考えている。 - ぼくらはみんな欠けている。
嫌いな季節を前に、「よし」と体制を整えて一呼吸ついた間に過ぎ去ってしまった。
雨が多く、北海道では珍しく湿気の酷い夏だったのだ。
Photed by http://instagram.com/ayakaaa28
今年の夏の思い出は
札幌でじっとりと体に張り付いた暑さの中で飲んだ
グアテマラコーヒーの香りと
アメリカンな少し甘すぎるクッキーの味と
照れ笑いが素敵な店員の笑顔と。
むわむわとした空気の中で
紫陽花の鮮やかさが異彩を放っていたこと。
水面が映し出すのは紫陽花の変わりゆく色 揺蕩う君の瞳#不器用なこいびとたち#川柳#自由#五七五七七 #池#札幌#中島公園#紫陽花#移り気#創作#フィクション#ボート#あじさい#移り気の花
(Instagramより)
あれだけ嫌いだ嫌いだと言っていたのに
いざ待ち構えても
結局なにもしてくれなかった2016、夏。
恋しくなってしまうじゃないか。
まるで会いたい人に会えないみたいな。
Photed by http://instagram.com/ayakaaa28
部屋の空気が冷えたことで目を覚まし
空の高さと横に広がる雲を眺めていたら
夕暮れの時間がどんどん早くなってきて
夜長の秋が始まる。
金木犀の香りをぼんやりと想像しながら。
諦めた季節にさよならをして
時間はこうして巡り巡っていく。